イアン・ブレマー氏の新作が出たとのことで購入。
対立の世紀を読んだのは2年前。
そちらでも「我々」対「彼ら」の図式に対する指摘があった。
丁度米国中間選挙だが、対立はますます激化し相手陣営に対する不寛容が増している。
4割以上のアメリカ人が近々内戦(Civil War)が起きそうと答えているほど。

しかし、この本の原題はThe Power Of Crisisすなわち「危機の力」である。
危機感を共有することで、対立を超えた結集が図れないか、というメッセージが主題。
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裏面には、解決策の提示と書かれている。
なお、裏帯にもあるが、本書の始まりでは日本のことを安定した国としてえらく持ち上げている。無論リップサービスであるが。
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「対立の世紀」と本書の構成は大きく異なる。
米国の中の対立と、米国と中国の対立に焦点を当て、その後はパンデミック、気候変動、テクノロジーという大きなテーマについての課題やリスクを記述し、最後に協調への道がないかを探る、という流れになっている。

この本を読んで良かったと思うかどうかは、何を求めるかによると思う。前作では、主要な新興国を1つ1つ挙げ状況説明と課題を解説してくれていた。私個人としては、新しい知識が得られたことに価値を見出すことができた。本書においては、既に認識済の大きなテーマについて、読者に対し危機感を訴えかけるような記述が多く、前作に求めた内容を期待すると、少し違う感覚を覚えることになる。
米国内の対立が激化している、米中の方向性に交わる余地はない、ほんとにその通りだと思うが(本で挙げられている様々な証拠は別として)言われなくても既に知っていることである。

特に、気候変動に関しては、自身は総論賛成なものの、未だ100%感情移入できていない口であるため、上から目線で畳みかけられると、逆に冷めていってしまう面もある。著者と一致した問題意識を持っていれば「その通り」という読後感になるのかもしれない。

国際協調への解決策も現実味があるような感じがしなかった。ただ、著者からみれば、それは私の意識が低いせいということになろう。書いてある内容は真っ当で、主張の方向もおかしなものではない。良い本だろうとは思うのだが、自身は何故かスッキリしなかった。客観的なトーンというよりも、著者自身が強く感じている危機感を訴えかける感じ。

何度も言うが、この本が悪いわけではなく、私個人がそう感じただけのことである。他の方は違う印象を持つかもしれない。